給与計算とは?流れや始める時のポイント、業務の基礎知識を解説

給与計算とは?流れや始める時のポイント、業務の基礎知識を解説

経理に異動になった社員や、従業員を雇うことになった事業主にとって、給与計算をすぐにマスターするのは難しいものです。

この記事では、給与計算の流れや給与計算を始める時のポイント、給与計算業務の基礎知識について解説します。

最後まで読めば、給与計算が把握できて給与の支払いができるようになります。

目次
  1. 1. 給与計算とは
  2. 2. 給与計算の流れ
    1. 2-1. 総支給額の計算
    2. 2-2. 社会保険料の算出と控除
    3. 2-3. 税額の算出と控除
    4. 2-4. 労使協定に基づく項目の控除
    5. 2-5. 手取り額の決定
  3. 3. 給与計算を始める時のポイント
    1. 3-1. 賃金支払5原則を遵守する
    2. 3-2. 最低賃金ルールをチェックする
    3. 3-3. 社会保険の加入条件などを確認する
    4. 3-4. 残業代の支払い計算を正確にする
  4. 4. 給与計算業務の基礎知識
    1. 4-1. 基本給
    2. 4-2. 手当
    3. 4-3. 法定控除
    4. 4-4. 協定控除
    5. 4-5. 所得税
    6. 4-6. 住民税
    7. 4-7. 社会保険料
  5. 5. 給与計算を効率化するおすすめツール紹介
    1. 5-1. フリーウェイ給与計算
    2. 5-2. やよいの給与計算23
    3. 5-3. 人事労務freee
    4. 5-4. 給与奉行クラウド
    5. 5-5. COMPANY給与明細
  6. 6. 給与計算の流れや給与計算を始める時のポイントについて説明しました

給与計算とは

給与計算とは、総支給額から各種控除を差し引き、従業員に実際に支払う給与額を計算するまでの一連の流れをいいます。

給与計算には、以下の3つがあります。

種類

内容

総支給額の計算

総支給額とは、基本給と各種手当を合算した合計金額

控除額の計算

控除額とは総支給額から差し引かれる金額の総額

差引支給額(手取り額)の計算

総支給額から控除額を引いて残った金額

給与計算の流れ

給与計算の流れ

給与計算の流れについて解説します。

総支給額の計算

まずは従業員の勤怠情報をもとに総支給額を計算します。総支給額を計算するときに必要なのは以下の情報です。

種類

内容

基本給

残業代や手当を除いたもの

各種手当

通勤手当・時間外勤務手当住宅手当・家族手当など

欠勤控除

欠勤・遅刻・早退の分を控除

総支給額の計算は以下の通りです。

総支給額=基本給+各種手当-欠勤控除

社会保険料の算出と控除

続いて健康保険料や厚生年金保険料など5つで構成される社会保険料の算出と控除を行います。

社会保険料とは、以下の法定控除を指し、労働者の賃金から控除する保険料です。

  • 厚生年金保険料
  • 雇用保険料
  • 健康保険料
  • 介護保険料

厚生年金保険料と健康保険料に関しては、労働者が半分負担し、残りは企業が負担する仕組みです。

税額の算出と控除

税額の計算では、所得税と住民税を対象に算出し、総支給額からの控除を実施します。

課税対象額=給与-社会保険料

所得税の天引き額を把握するには、課税対象額に給与所得の源泉徴収税額表を適用します。また税額表は、扶養家族の数によって異なります。扶養家族の数は、事前申告が必要です。

労使協定に基づく項目の控除

労使協定で労働組合費や財形貯蓄などを控除項目に設定している場合「その他の控除項目」として控除します。

賃金から控除するには、労使協定だけではなく、社販・社宅などの福利厚生費用や、社内貯金や組合費など明確なものが必要です。

以下のように、労使協定を締結し、控除に関する項目を協定書で定めます。

  • 賃金の支払日
  • 項目の詳細
  • 協定の期間

また、従業員へ労使協定を周知させることが求められます。労使協定なしで賃金控除した場合、法律違反として30万円以下の罰金を課せられてしまうため、注意が必要です。

手取り額の決定

総支給額や各種控除額を算出したら、最終的な支給額を計算します。

手取り額=総支給額-社会保険料-控除額-税金

基本給・残業代・手当が総支給額に入っています。端数が出た場合の計算は、繰り上げです。

給与計算を始める時のポイント

給与計算を始める時のポイント

給与計算を始める時のポイントについて解説します。

賃金支払5原則を遵守する

労働基準法第24条には、以下のように賃金支払の5原則があり、遵守しなくてはなりません。

(1)通貨で(2)直接労働者に(3)全額を(4)毎月1回以上(5)一定の期日を定めて支払う

なお、例外は、労働協約を締結し、規定を設けた場合です。

“(賃金の支払)

第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。

ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について

確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、

また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合が

あるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を

代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。

(2) 賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。

ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金

(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。“

引用:e-GOV法令検索

最低賃金ルールをチェックする

最低賃金ルールをチェックする

画像引用:厚生労働省「最低賃金の対象となる賃金」

給与は地域別の最低賃金ルールに則った形での支給を遵守します。最低賃金の対象となる賃金は以下の通りです。

  • 結婚手当など臨時の賃金
  • 賞与など
  • 時間外割増賃金など
  • 休日割増賃金など
  • 深夜割増賃金など
  • 皆勤手当・通勤手当・家族手当

社会保険の加入条件などを確認する

社会保険の加入条件などを確認する

画像引用:厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト

社会保険の加入条件は年々拡大しています。常に厚生労働省のホームページなどで加入条件を確認しておきましょう。

対象企業

社会保険の適用範囲

2022年10月から

従業員数101人~500人の企業で働くパート・アルバイト

2024年10月から

従業員数51人~100人の企業で働くパート・アルバイト

従業員数のカウント方法は以下の通りです。

従業員数のカウント方法

画像引用:厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト

残業代の支払い計算を正確にする

残業代の支払い計算を正確にする

画像引用:しっかりマスター労働基準法 割増賃金編

残業代の不払いは労働基準法第37条に基づく違反事項です。残業代の支払い計算は正確にする必要があります。たとえば、残業代の算定を本来の1分単位ではなく、15分単位としている場合は違反になります。

法定休日は時間外労働に該当しません。ただし、深夜に労働させた場合、深夜手当を支払う必要があります。

“(時間外、休日及び深夜の割増賃金)

第三十七条 使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、

又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は

労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で

計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月

について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間

の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

(2) 前項の政令は、労働者の福祉、時間外又は休日の労働の動向その他の事情を

  考慮して定めるものとする。

(3) 使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、

労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による

協定により、第一項ただし書の規定により割増賃金を支払うべき労働者に対して、当該割増賃金の

支払に代えて、通常の労働時間の賃金が支払われる休暇(第三十九条の規定による有給休暇を

除く。)を厚生労働省令で定めるところにより与えることを定めた場合において、当該労働者が

当該休暇を取得したときは、当該労働者の同項ただし書に規定する時間を超えた時間の労働の

うち当該取得した休暇に対応するものとして厚生労働省令で定める時間の労働については、

同項ただし書の規定による割増賃金を支払うことを要しない。

(4) 使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、

その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合に

おいては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で

計算した割増賃金を支払わなければならない。

(5) 第一項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令

で定める賃金は算入しない。“

引用:e-GOV法令検索

しっかりマスター労働基準法 割増賃金編

画像引用:しっかりマスター労働基準法 割増賃金編

給与計算業務の基礎知識

給与計算業務の基礎知識

給与計算業務の基礎知識について解説します。

基本給

基本給とは、以下の諸手当が入らない基本の給料を指します。

  • 残業代
  • 通勤手当
  • 役職手当

月給=基本給+諸手当(役職手当・家族手当)

残業代は基本給に含まれていません。しかし、固定残業代を基本給に含む会社もあります。

手当

手当とは、以下のように基本給を補うものを言います。手当を支給する目的は、社員のモチベーションの向上、必要経費の補填などがあります。

  • 役割役職手当
  • 家族手当
  • 営業手当
  • 住宅手当
  • 時間外労働手当
  • 深夜労働手当
  • 休日労働手当
  • 通勤手当

法定控除

法定控除とは、労働基準法第24条により差し引くことが義務付けられているものです。法定控除は以下の通りです。

  • 所得税
  • 住民税
  • 健康保険料
  • 厚生年金保険料
  • 雇用保険料

協定控除

協定控除とは、労働者と会社の取り決めで差し引くことができる控除です。別名「法定外控除」と呼びます。主な法定外控除は以下の通りです。ただし労使協定なしに会社が控除できません。

  • 財形貯蓄
  • 労働組合費
  • 互助会費

所得税

所得税とは、会社からもらう給料や自営業で稼いだお金など、個人の所得に対してかかる税金です。

所得=収入-経費

1年間の全ての所得から所得控除を差し引いた残りの課税所得に税率を適用して計算します。

税額=(所得-控除)× 税率

所得税の特徴は、以下の通りです。

  • 所得に応じた負担を求められる
  • 家族構成に応じた配慮を行える
  • 現役世代が負担している

住民税

住民税

画像引用:財務省 身近な税

住民税とは、地域住民が地域社会の費用を分担するものです。

以下の2種類があります。

  • 市町村民税
  • 道府県民税

また、市区町村(都道府県)に住所などがある個人が負担する「個人住民税」と「法人住民税」に分かれます。

社会保険料

社会保険料とは、以下の5つの社会保険をいいます。病気・怪我・出産・労働災害などで休職・失業し収入が途絶えた場合、保障する制度です。

それぞれの計算式は以下の通りです。

種類

計算式

従業員の負担

健康保険

  • 健康保険料 = 標準報酬月額 × 健康保険料率
  • 従業員の負担分 = 健康保険料 ÷ 2

会社と折半

介護保険

  • 介護保険料 = 標準報酬月額 × 介護保険料率
  • 介護保険料 ÷ 2

会社と折半

厚生年金保険

  • 厚生年金保険料 = 標準報酬月額 × 18.300%
  • 従業員の負担分 = 厚生年金保険料 ÷ 2

会社と折半

雇用保険

計算対象

となる賃金

  • 基本給・固定給等基本賃金
  • 賞与
  • 超過勤務手当・深夜手当・休日出勤手当等
  • 残業手当・深夜手当
  • 宿、日直手当
  • 奨励手当
  • 扶養手当・子供手当・家族手当等
  • 資格手当・技能手当・教育手当
  • 住宅手当・転勤手当・単身赴任手当
  • 休業手当
  • 創立記念日等の祝金

会社と折半

計算式

雇用保険料=給与総額×雇用保険料率

※下記の保険料率を適用

労災保険

 

無し

令和5年度雇用保険料率のご案内

画像引用:令和5年度雇用保険料率のご案内

給与計算を効率化するおすすめツール紹介

給与計算を効率化するおすすめツール紹介

給与計算を効率化するおすすめツールを紹介します。

種類

概要

料金

フリーウェイ

給与計算

従業員5人まで永久無料のクラウド型

給与計算ソフト

  • 初期費用:無料
  • 月額利用料:
    • 無料版:無料
    • 有料版:2,178円/月

やよいの給与計算23

初心者でも、給与明細書を容易に

発行できるソフト

  • 0円~

人事労務freee

勤怠管理や給与計算などあらゆる業務に

対応できるソフト

  • 440円/月/人(税込)~

給与奉行

クラウド

効率的な給与計算とペーパーレスに役立つ

クラウド給与計算システム

  • 利用料:月額5,500円~
  • 初期費用:0円~

COMPANY給与明細

大手法人を中心に約1,200法人グループに

選ばれている業務自動化を促進するソフト

  • 要相談

フリーウェイ給与計算

フリーウェイ給与計算

画像引用:フリーウェイ給与計算

「フリーウェイ給与計算」は、従業員5人まで永久無料のクラウド型給与計算ソフトです。6人以上は2名で無制限に利用可能です。

以下の機能が無料で利用できます。

  • 年末調整
  • 全銀データ出力
  • 給与明細のメール送信

保険料率の変更や税率の改正にもすぐに対応でき、常時最新の機能を利用可能。初心者でも設定しやすいシンプルな画面とメニューが特徴です。2023年4月30日時点で98,554ユーザーが利用しています。

「フリーウェイ給与計算」の料金プランと導入実績は以下の通り。

種類

内容

無料版

  • 初期費用:無料
  • 月額利用料:無料
  • バージョンアップ料:無料
  • 利用期間:無制限

有料版

  • 初期費用:無料
  • 月額利用料:2,178円(年間26,136円)

※税込価格です

  • バージョンアップ料:無料
  • 利用期間:1年ごとの更新

やよいの給与計算23

やよいの給与計算23

画像引用:やよいの給与計算23

「やよいの給与計算23」は、初心者でも、給与明細書を容易に発行できるソフトです。「BCN AWARD」で24年連続1位となっており、3人に2人が利用しています。

動画「スタートアップガイド」で設定方法を学べ、給与データ作成がスムーズにできます。

「やよいの給与計算」には以下の機能があります。

  • 社会保険
  • 集計
  • 給与計算
  • 年末調整
  • マイナンバー管理

料金プランは以下の通りです。

種類

内容

セルフプラン1年間無料

  • 税込価格:0円(通常年間価格22,000円)

ベーシックプラン1年間無料

  • 税込価格:0円(通常年間価格29,700円)

トータルプラン特別価格

  • 税込価格:20,185円(通常年間価格40,370円)

人事労務freee

人事労務freee

画像引用:人事労務freee

「人事労務freee」は以下のあらゆる業務に対応できるソフトです。

  • 勤怠管理
  • 給与計算
  • 入退室管理
  • 会計/経費計算連携
  • 年末調整
  • 行政手続き
  • 従業員管理

また他社ソフトと外部連携できるため、ツールを1つにまとめられます。

料金プランは以下の通りです。

種類

内容

ミニマム

  • 440円/月/人(税込)

スターター

  • 660円/月/人(税込)

スタンダード

  • 880円/月/人(税込)

アドバンス

  • 1,210円/月/人(税込)

給与奉行クラウド

給与奉行クラウド

画像引用:給与奉行クラウド

「給与奉行クラウド」は、効率的な給与計算とペーパーレスに役立つクラウド給与計算システムです。2022年1月の発売から、導入企業は100社以上。人事労務など管理業務全体を効率化し、70の定型・非定型業務のデジタル化を促進します。

「給与奉行クラウド」の機能は以下の通りです。

  • 給与処理
  • 賞与処理
  • 明細書配付・振込
  • 社会保険・労働保険
  • 年末調整
  • マイナンバー管理
  • 管理帳票

またカオナビやOffice365など外部システムとの連携もできます。

従業員数1〜999人の料金プランは以下の通りです。

種類

内容

iEシステム

  • 利用料:月額5,500円

(年額66,000円)

  • 初期費用:0円

iAシステム

  • 利用料:月額9,000円

(年額108,000円)

  • 初期費用:50,000円

iBシステム

  • 利用料:月額17,000円

(年額204,000円)

  • 初期費用:60,000円

iSシステム

  • 利用料:月額23,000円

(年額276,000円)

  • 初期費用:70,000円

iSシステム

  • 利用料:月額93,000円

(年額1,116,000円)

  • 初期費用:70,000円

中堅・上場企業向けの「奉行V ERPクラウド」やグループ企業向けの「奉行クラウド Group Shared Model」もあります。

COMPANY給与明細

COMPANY給与明細

画像引用:COMPANY給与明細

「COMPANY給与明細」は、大手法人を中心に約1,200法人グループに選ばれている業務自動化を促進するソフトです。

契約継続率も98%となっており、大企業から評価されています。元データの収集から給与チェック処理までできるため、面倒なエクセル処理が不要です。

「COMPANY給与明細」の機能は以下の通りです。

  • 月例給与・賞与
  • 計算結果確認
  • 福利厚生
  • 社会保険
  • 年末調整
  • 退職金・企業年金
  • 会計仕訳・出向費用

料金プランについては「COMPANY給与明細」にお問い合わせください。

給与計算の流れや給与計算を始める時のポイントについて説明しました

給与計算について知りたい方向けに、給与計算の流れや給与計算を始める時のポイント、給与計算業務の基礎知識を解説しました。

給与計算を始める時のポイントは、以下の通りです。

  • 賃金支払5原則を遵守する
  • 最低賃金ルールをチェックする
  • 社会保険の加入条件などを確認する
  • 残業代の支払い計算を正確にする

本記事で紹介した内容から、給与計算を正しく行い、給与を支払えるでしょう。