雇用保険の加入条件とは?加入時の必要書類や手続きの流れを解説
「従業員を雇うなら雇用保険に入れる必要がある」とわかっていても「どんな条件なのかわからない」とお悩みではありませんか?
この記事では、雇用保険の加入条件や雇用保険の加入手続きの流れなどについて解説します。
最後まで読めば、雇用保険の加入条件について把握でき、適切に手続きできるようになります。
雇用保険の加入条件
雇用保険の加入条件について解説します。
1週間の所定労働時間が20時間以上である
雇用保険の加入条件の1つは、1週間あたりの所定労働時間が20時間以上であることです。1週間あたりの所定労働時間とは、就業規則などで定義されている勤務すべき時間をいいます。
また、週には以下の日を含みません。
- 祝祭日及びその振替休日
- 年末年始の休日
- 夏季休暇などの特別休日
1週間の所定労働時間が短期的かつ変動的な場合、1週間の平均労働時間を所定労働時間とみなします。
各週の平均労働時間が1か月単位、1年単位の場合、以下のように計算します。
【平均労働時間が1か月単位】
1週間の所定労働時間=1か月の所定労働時間÷52/12 |
【平均労働時間が1年単位】
1週間の所定労働時間=1年の所定労働時間÷52 |
31日以上の雇用見込みがある
31日以上働く見込みは、雇用形態にかかわらず、すべての労働者に適用されます。
具体的には、以下に該当する労働者です。
- 期間の定めがなく雇用される
画像引用:厚生労働省「第4章被保険者について」
- 雇用期間が1カ月以上である
画像引用:厚生労働省「第4章被保険者について」
- 雇用契約に更新規定があり、1カ月未満での雇止めの明示がない
- 雇用契約に更新規定はないが労働者が1カ月以上雇用されている
画像引用:厚生労働省「第4章被保険者について」
学校の学生、生徒ではない
中学校や高校、大学など学校教育法第1条に該当する生徒、学生は雇用保険の対象にはなりません。
【学校の範囲】
第1条
この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。
【各種学校】
第134条
第1条に掲げるもの以外のもので、学校教育に類する教育を行うもの(当該教育を行うにつき他の法律に特別の規定があるもの及び第124条に規定する専修学校の教育を行うものを除く。)は、各種学校とする。
2 第4条第1項、第5条から第7条まで、第9条から第11条まで、第13条、第14条及び第42条から第44条までの規定は、各種学校に準用する。この場合において、第4条第1項中「次の各号に掲げる学校の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める者」とあるのは「市町村の設置する各種学校にあつては都道府県の教育委員会、私立の各種学校にあつては都道府県知事」と、第10条中「大学及び高等専門学校にあつては文部科学大臣に、大学及び高等専門学校以外の学校にあつては都道府県知事に」とあるのは「都道府県知事に」と、第13条中「第4条第1項各号に掲げる学校」とあるのは「市町村の設置する各種学校又は私立の各種学校」と、「同項各号に定める者」とあるのは「都道府県の教育委員会又は都道府県知事」と、同条第2号中「その者」とあるのは「当該都道府県の教育委員会又は都道府県知事」と、第14条中「大学及び高等専門学校以外の市町村の設置する学校については都道府県の教育委員会、大学及び高等専門学校以外の私立学校については都道府県知事」とあるのは「市町村の設置する各種学校については都道府県の教育委員会、私立の各種学校については都道府県知事」と読み替えるものとする。
3 前項のほか、各種学校に関し必要な事項は、文部科学大臣が、これを定める。
引用:文部科学省 学校教育法
【専修学校】
第124条
第1条に掲げるもの以外の教育施設で、職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図ることを目的として次の各号に該当する組織的な教育を行うもの(当該教育を行うにつき他の法律に特別の規定があるもの及び我が国に居住する外国人を専ら対象とするものを除く。)は、専修学校とする。
1 修業年限が1年以上であること。
2 授業時数が文部科学大臣の定める授業時数以上であること。
3 教育を受ける者が常時40人以上であること。
引用:文部科学省 学校教育法
正規、非正規で加入条件の差はない
雇用保険は正規、非正規で加入条件に差がなく、条件に合致すれば誰でも加入する必要があります。
以下の要件をともに満たせば、パート・アルバイトであっても、雇用保険に加入する必要があります。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上である
- 31日以上の雇用見込みがある
雇用保険の適用事業と暫定任意適用事業
雇用保険の適用事業と暫定任意適用事業について解説します。
雇用保険の適用事業
雇用保険では、業種のいかんを問わず、すべて適用事業になります。適用事業の事業主は、労働保険の保険料の徴収等に関する法律の規定による労働保険料の納付、法の規定による各種の届出等が必要です。
事業とは、経営上一体をなす本店、支店、工場等を総合した企業そのものではなく、個々の本店、支店、工場、鉱山、事務所のような独立性をもった経営体を指します。
ただし、建設事業に関しては、元請負人、下請負人がそれぞれ別個の事業主として処理する必要があります。
また、適用事業に雇用される労働者は、雇用保険の被保険者となります。
雇用保険の暫定任意適用事業
雇用保険の暫定任意適用事業とは、農林水産業の個人経営の事業であり、労働者が常時5人未満の事業です。事業において、雇用する労働者の1/2以上が加入を希望し、所轄の労働局長に認可された場合、労働者が雇用保険の被保険者になります。
暫定任意適用事業は、事業主が以下の点において可能であると判断された場合、認可されます。
- 労働者と雇用関係が明確である
- 事業主に労働保険関係法令上の義務の履行を期待できる
雇用保険の加入時に必要な書類
雇用保険の加入時に必要な書類について解説します。
労働保険関係
労働保険関係における一元適用事業の場合、労働保険関係成立届と概算保険料申告書を労働基準監督署に提出後、ハローワークで両提出書類の事業主控の提出が必要です。
一元適用事業とは、労災保険と雇用保険に関する保険料の申告・納付等を両保険一本として行う事業をいいます。
保険関係成立届の手続きを行った後又は同時に、概算保険料申告書の手続きを行います。保険関係成立届の手続きを行った後に、雇用保険適用事業所設置届及び雇用保険被保険者資格取得届の手続きを行います。
雇用保険適用事業所設置関係
雇用保険適用事業所設置関係では法人の場合、以下のような書類の提出が必要です。
- 雇用保険適用事業所設置届
- 商業登記簿謄本
- 所在地が記載された公共料金請求書
- 営業許可証
- 売買契約書、請負契約書、委託契約書、取引先が発行した請求書・納品書・注文書等
個人事業の場合、事業主の世帯全体の住民票が必要です。
雇用保険被保険者資格取得関係
雇用保険被保険者資格取得関係では、以下のような書類の提出が必要です。
- 雇用保険被保険者資格取得届(要マイナンバー)
- 労働者名簿
- タイムカード
- 賃金台帳
- 雇用契約書
- 過去に雇用保険加入歴があり被保険者番号が不明な場合、履歴書等本人の職歴が分かる書類
雇用保険の加入手続きの流れ
画像引用:労働保険の成立手続
雇用保険の加入手続きの流れについて解説します。
書類名 |
申請期間 |
提出場所 |
保険関係成立届 |
保険関係が成立した日の 翌日から起算して10日以内 |
所轄の労働基準監督署 |
概算保険料申告書 |
保険関係が成立した日の 翌日から起算して50日以内 |
所轄の労働基準監督署 所轄の都道府県労働局 日本銀行のいずれか |
雇用保険適用事業所設置届 |
設置の日の翌日から起算して 10日以内 |
所轄のハローワーク |
雇用保険被保険者資格取得届 |
資格取得の事実があった日の 翌月10日まで |
所轄のハローワーク |
事務所設置時は労働基準監督署に保険関係成立届を提出する
事務所を設置し、労働保険の適用事業となった場合、まず労働保険の保険関係成立届を所管の労働基準監督署に提出します。成立届の提出期限は、保険関係の成立日の翌日から起算して10日以内です。
事務所設置後最初に従業員を採用する時は雇用保険適用事業所設置届と保険関係成立届の控えをハローワークに提出する
事務所設置後最初に従業員を採用する場合、雇用保険適用事業所設置届と保険関係成立届の控えをハローワークに提出します。設置届は設置の日の翌日から起算して10日以内に提出する必要があります。
ハローワークに雇用保険被保険者資格取得届を提出する
資格取得の事実があった日の翌日10日までに、ハローワークへ雇用保険被保険者資格取得届を提出します。取得届は、労働者を雇い入れるたびに必要です。
ハローワークで交付された雇用保険資格取得等確認通知書と雇用保険被保険者証を従業員に渡す
雇用保険の加入手続きが完了したことを労働者が把握できるようにするため、従業員にハローワークで交付された以下のものを渡します。
- 雇用保険資格取得等確認通知書
- 雇用保険被保険者証
雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)は、事業主が雇い入れた労働者の雇用保険の加入の有無を確認するための書類です。そのため、大切に保管する必要があります。
雇用保険の加入条件に関する注意点
雇用保険の加入条件に関する注意点について解説します。
雇用保険加入が重複していないか確認する
雇用保険は複数の事業所で二重加入ができないことから、雇用保険加入が重複していないか確認する必要があります。
前事業所の資格喪失日と再就職先事業所の資格取得日が重複している場合、資格喪失日を基準に処理をします。ただし、処理は、雇用保険手続固有のものであり、事業所の雇用関係に影響はありません。
中途採用者の雇用保険加入期間は一定条件でリセットされる
中途採用者の雇用保険加入期間は、被保険者であった期間に1年を超えて空白がある場合などにリセットされます。被保険者であった期間に1年以上空白がある場合、その前の期間は含まず、再就職後から離職までの被保険者であった期間が算定基礎期間です。
受給前の被保険者であった期間は含まず、受給後の被保険者であった期間が算定基礎期間となります。
被保険者となった日が被保険者であったことの確認があった日から2年以上前である場合、2年以内の被保険者であった期間が算定基礎期間となります。そのため、以前の被保険者であった期間は含めることができません。
被保険者であった期間に育児休業を取得し、育児休業基本給付金の支給を受けた期間は算定基礎期間に含めることはできません。
複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者は雇用保険マルチジョブホルダー制度が適用される
画像引用:雇⽤保険マルチジョブホルダー制度の申請パンフレット
複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者は、特例的に雇用保険の被保険者となる雇用保険マルチジョブホルダー制度が適用されます。
制度が適用になるのは以下の場合です。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上である
- 31日以上の雇用見込みがある
制度により、離職の⽇以前1年間に11⽇以上の賃⾦⽀払いの基礎となる月が半年月以上の勤務実績があれば、失業給付を受給できます。勤務実績が11日に満たない場合の要件は80時間以上の勤務です。
被保険者であった期間に応じて30日分または50日分の一時⾦が⽀払われます。
雇用保険の加入条件や加入時に必要な書類について説明しました
雇用保険について知りたい方向けに、雇用保険の加入条件や雇用保険の加入手続きの流れなどを解説しました。
雇用保険の加入手続きの流れは、以下の通りです。
- 事務所設置時は労働基準監督署に保険関係成立届を提出する
- 事務所設置後最初に従業員を採用する時は雇用保険適用事業所設置届と保険関係成立届の控えをハローワークに提出する
- ハローワークに雇用保険被保険者資格取得届を提出する
- ハローワークで交付された雇用保険資格取得等確認通知書と雇用保険被保険者証を従業員に渡す
本記事で紹介した内容から、雇用保険の加入条件について把握でき、適切に手続きができるでしょう。